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「渦流の国の少女・スラブタルフィーギの襲撃」(9)

いったんは奴隷船に収容されたスナフだったが、再びキルスに呼びつけられ、それをスナフが拒否したことでキルスの怒りを買った。そして船団の副艦、旗艦を挟んで並ぶ二隻のうち、旗艦左舷方向の一隻内の貨物デッキで、スナフはキルス相手に剣戟を強制されてしまうことになる。 キルスに付き合わなければ奴隷扱いを受けている仲間にもキルスの怒りが飛び火することを避けたかったからだった。

「お前が私との戦いから逃げ続けるからだ!」

「逃げ続ける?キルスと戦う理由がどこにあるんだ」

そう言いながら、スナフは剣でキルスを軽くかわす。キルスの剣裁きは荒すぎで、かわすのは楽だったが、スナフはキルスをどう説得するか苦心していた。

「どこまでもお前がそんな態度を取るからだ」

戦う意志がないことを示せば示すほど、キルスの気持ちを収めるどころか火に油を注ぐだけだった。

「戦う必要はない。まして、仲間を犠牲にしてまでやることじゃない」

「まだ言うかっ!」

「キルスは、あの盗賊にそそのかされているだけだ!」

そのスナフの言葉も、キルスの反発を生んだ。キルスは率先してニニック、ガルハナ二人の盗賊についていった。そのことをスナフは十分承知していた。けれど、それをスナフは認めたくなかったのだ。

「私はっ、私の意志でやっているっ!」

「嘘だ!」

表向きはキルスとスナフ、そしてハッカーニは盗賊のボスの子供となっているが、ただ拾われただけという事実は盗賊のボスである二人の夫婦を除けばハッカーニ 亡き今、スナフとキルスの二人しか知らない。キルス自身はその過去を本当に忘れたか、忘れようとしているのか分からない。こうして剣戟を続けながらも、スナフにはその落とし所が見つけられないでいる。

「ハッカーニを殺しておいて、同じ爆弾を埋めた俺を何故殺さなかった!」

実際、キルスはスナフとハッカーニを裏切り者扱いにした。そしてスナフとハッカーニだけでなく、スラブタルフィーギの盗賊に拾われた仲間たちを奴隷として貶めた。それを盗賊のトップである二人の夫婦は何も咎めないし、事情を知らない盗賊の手下たちはこの組織で生きていく以上、盗賊の息子らしいキルスの振る舞いをそういうものだと受け取る他はない。今もこの二人を止める者はおろか、近づく者はいない。

「あのフィギュア人間のドームで爆発させることもできたはずだ!何故そうしない!そのつもりだったんだろう!」

「黙れ!」

「だったら、俺がお前に従えばそれで満足するのか!?」

スナフがキルスの本心をたぐり寄せようとするが、言動や振る舞いであたかも自身の有様を上書きしていくようにも見えるからキルスの本心はますます見えなくなる。というよりそうやって本心を埋めていくようにも見えて、スナフは困惑する。

それは、キルスが渦流魂とともに「端末」に連れさられたあの時からなのはスナフには分かっていたが、時を戻すことは出来ないし、何を取り戻せばいいのかも分からない。

しかし、ハッカーニが埋め込まれた爆弾で死に、自分、さらには奴隷扱いされている仲間にも同じことをしようとしているのをキルス自身から聞かされれば、スナフはキルスを決して許すことは出来なかった。キルスの動きは隙だらけで、剣で心臓をひと突きすることも容易に思えた。そうやってキルスを楽にさせてやることも不可能ではない。そんな思いがスナフの脳裏を掠めたが、スナフには絶対に出来ないことだった。



「ボス、ここいらでいい加減、盗賊の看板は下ろしましょうや。渦流燃料の商圏を維持する方が大事ですぜ」

フェイクスの言葉に乗ってトリティーラ・スロウが言う。

「む、むう」

ニニック・スラブタルフィーギは煮えきらない態度でいたが、

「グレコ、このフィギュアどもの皮を剥げ、そしてこのハイエナのトリティーラも殺してお仕舞い」

ガルハナ・スラブタルフィーギはブリッジの盗賊の一人に命じた。

だがグレコとガルハナに呼ばれた男が躊躇していたので、

「そう、じゃあ、あたしがやる」

ガルハナはそう言って、拳銃を取り出し、トリティーラに向けてそのまま撃った。

それが、決裂の合図となった。

元素子が、スナフとキルスがいる副艦の格納庫に収容されているキグルミ、横倒しにされたままのキグルミの左腕だけを起動、

「敵襲、何!?」

その副艦船員の声が船団内通信で旗艦スラブタルまで通じ、スラブタル艦橋内の動きも一瞬止まって、船団内の盗賊の目をキグルミに引き付けた。

挙げたキグルミの左腕が勢いをつけて落ち、格納庫の床をぶち破り、階下の貨物デッキの一部をも破壊した。終わりが見えないと思われたスナフとキルスの剣戟がそのことで中断させられた。

キグルミの階下のデッキにスナフとキルスがいたことまで元素子が把握する余裕は無かった。

元素子はキグルミに残してきた渦流魂の一部を、スラブタル艦橋まで張ってきた渦流ワイヤーを伝わせて本体のフィギュアに戻していた。さらに密かに関節を外して二の腕だけになった左腕の射出口からそのままブリッジ内で微粒の渦流弾を速射して煙幕展開、その後、完全にキグルミへ渦流魂を移した。

フェイクスは放心状態のノース・ノキユの手を引き、ハルモ・ルニーは抜け殻になった元素子のフィギュアを背負い、元素子が初弾で破壊したブリッジのハッチから脱出した。
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