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「渦流の国の少女・スラブタルフィーギの襲撃」(7)

「フェイクスが乗っててくれて助かったよ」

そう言うハルモ・ルニーと、ノース・ノキユ二人をも収容したキグルミのコックピットは定員三名を超えてさすがに手狭だった。

「ハルモ・ルニーさんはフィギュア替えたばかりなのに、よく本人だって分かったわね。さすがはフェイクス・オリジ君」

ハルモに半分シートを取られ、その横でバツが悪そうにしているフェイクスに、ノース・ノキユの皮肉が飛ぶ。

「俺は外見でヒトを見ないんだよ」

「元素子さん、この人をどうするつもりだったのかしら」

フェイクスの苦し紛れの言葉はスルーしてノキユはスナフの方を見て言った。

「そうだね。とりあえず運営委員会に引き渡すことになるか…」

元素子はそうノキユに答えながらキグルミをゆっくりとドームの後方へと歩かせた。戦闘はまだ続いてはいたが、そこからかなりの距離は取ることができていた。

「そう」

「ここ、代わるか?」

スナフは、スナフとフェイクス(と隣のハルモ)の二つの席の後ろ、中間あたりの空間で膝を抱えて座っているノキユに席を譲ろうとした。

「いえ、あなたが気を使うことはないわ」

「何だよ、何か気になるのか?」

フェイクスはノキユの含みのある言い方に対して問いかけた。

「何でも私たち学生にやらせるくせに、肝心な事は隠してる気がするのよね。そうは感じない?聡明なフェイクス君」

「そうかい」

フェイクスはシラを切った。

「あ、いや…まあまあ」

スナフに対して、遠回しに腫れ物を触るような嫌な空気に耐えられず、ハルモが宥める。

「ハルモさんにもちょっと探ってもらってみたのだけれど、駄目だったのよね?」

場を収めるどころか逆に振られてしまったのでハルモはドギマギする。

「あー、そ、そうなんだよねー、やっぱり整備部の人たちも何も知らないみたいで…」

「とにかく、後は九重先生に任せよう。さ、降りて」

元素子がキグルミを破壊されていないドームテラスのところで止め、コックピットハッチを開く。渦流魂をキグルミから自分のフィギュアに戻して立ち上がり、スナフに向けて手を伸ばした。

スナフがハッチから上半身を出したその時だった。

「スナフか!奴隷の分際で、何故生きてる!」

その声と共に、エネルギー体ではない、槍のような物体がキグルミを掠った。掠っただけだが、元素子の渦流魂が抜け、コントロールオフの状態だったキグルミはあっさりとバランスを崩した。

「ハッチを閉めろ!倒れるぞ!」

元素子に覆い被さるように倒れこんだスナフが叫ぶ。

「きゃっ」

元素子がキグルミのコントロールを取り戻すヒマもなく、キグルミは横倒しになった。

「早くハッチを開けて、脱出するんだ!」

「やってるよ!」

元素子がヒステリックになる。

「だから、乗り物なのに、手足を使った操作系がないのはおかしいだろ!」

「しつこいな、お前、ちょっと黙ってろ。こいつはそんなに便利な代物じゃないんだよ」

スナフの言わんとすることは承知しつつ、フェイクスはキグルミのカメラを総動員して相手を捉えようとした。

「ハッチが開かない!」

その元素子の叫びと同時に、コックピット全体がミシミシと音を立てて締め付けられるような感じがあった。

フェイクスのカメラでは相手のカカシらしき物体から複数の捕獲ワイヤーが伸びているのが見えた。おそらく、キグルミのコックピット周りに巻き付いているのだろう。

「その声、キルスなんだろ?ハッカーニが死んだんだぞ!自分の仲間が死んだんだぞ!」

「あやつも貴様も仲間だと思ったことはない!裏切り者は仲間以下だ!我ら盗賊の、奴隷と同じだ!」

スナフの言葉は相手と双方向で、ワイヤーを通じて伝わるらしい。

「あのカカシに乗ってるらしい人って、スナフの知り合いなの?」

コックピット内であちこち転がって、その髪やフィギュアと一体化してない制服の乱れを直しながら、ハルモ・ルニーがふともらす。

「そうらしいな。それなりの事情があるんだろ」

「フェイクス、そんな悠長な」


「盗人なんてやってるから、殺し合いになるんだろ!」

スナフは元素子を押し退けて、開かないコックピットハッチの前に立って、キルスの操縦するカカシに向かってさらに叫ぶ。

「まだ、そんなたわけたことを言うか!」

キルスはそう返し、カカシの渦流浮力を増して、ワイアーを巻き付けた元素子たちのキグルミを引っ張り上げ、宙に浮かせてからいったん地面に叩きつけた。

スナフに反論させまいとしているようだった。

「馬鹿!相手を煽るなよ!」

フェイクスのその言葉も正論だった。

「…迂闊だった。自分が外にでなければ、キルスに見つかることはなかった」

「スナフ…」

元素子は彼の肩を抱き寄せる。スナフは拒否することはなかった。スナフの身体は思ったより柔らかく、暖かかった。

元素子は思わず自分のフィギュアの身体の硬さを恥じた。


「ハッチは開かなくても、君たちフィギュアから中身の渦流魂は脱出出来るんだろう。キグルミも同じ構造なら、キグルミの外に出られるんだろう?あいつは俺を狙ってる。君たちは関係ない」

「出られるけれど、素の渦流魂のままじゃ短時間しか持たない。いずれは死んでしまう。フィギュアは生命維持装置付きの宇宙服みたいなものなの…」

ハルモが答える。


「そうなのか…、やっかいだな」

「とにかく、あのカカシに乗ってるキルスって人に逆わらない方がいいのかもしれないわね」

「このままあいつに殺されるかもしれないんだぜ。信用出来るかよ」

そう言い合うノキユとフェイクスはスナフの方を見た。

「だからさ、もう。ごめん…何とかならないかな?」

ハルモ・ルニーはノキユとフェイクスの態度をフォローしつつ、スナフに協力を請う。

スナフはといえば、キルスの気性を知ってはいるものの、それが全てではなかったから、交渉するための自信はなかった。

「仕方ない。ここは投降しよう」

「スナフは、それでいいの?」

元素子は、スナフをキルスにもドーム・コミュ側にも引き渡したくないという気持ちが芽生えていたのでそう聞き返す。

キルスに声をかけようとしたスナフをノキユが制止した。

「待って。私が交渉するわ」

「おいおい」

「えーっ」

フェイクスとハルモがノキユの言葉に驚いた。
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でアニメ感想系まがいのことをやっていますが、こちらはオリジナル創作漫画、小説の発表用のブログです(時間がないときや事情によってはアイデア、プロットレベルのものを提示するのみ、になってしまうかもしれません)。
その他総合的なプロフィールはhttp://www.geocities.jp/tobofu/
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