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「渦流の国の少女・スラブタルフィーギの襲撃」(8)

相手のカカシのワイヤー通信を利用して、ノース・ノキユはドーム・コミュ運営生徒会長らしい威厳で、投降の意志をキルスに伝えた。キルスは意外にも、スナフ含めノキユや元素子たちがドーム側に対しての人質になる取引に応じた。そのことでとりあえず元素子たちはこの場を凌ぐことが出来た。


まだ真新しい巨大なドーム以外は広く瓦礫が散乱する荒地の上を、ホバリングで移動する地上船団が現れた。そして、ドーム・コミュの墓標ベースから奪った渦流魂を吸収した運搬用のカカシや攻撃用カカシが複数の地上船に収容されて、後退し、ドーム近辺から離れていく。もちろん、元素子たちのキグルミも収容されてしまう。

ガゼルらドーム・コミュ側の前衛部隊はドーム上層部の運営委員会から深追いを禁じられて、カカシ群を収容した船団を追撃することは出来なかった。追うにしても天然の「端末」群との戦いもあって部隊のフィギュア兵らは疲弊しており、戦力を立て直す必要があった。


一方、九重・ヴァン・花蓮はドーム・コミュ医師団の、異星の一人の医師と面会するところだった。

ハッカーニの検死を担当、スナフに埋め込まれていた爆弾摘出にも付き合った人物だった。鳥類のような頭部以外は太古の「人間」の姿とあまり変わらない。ちなみに、ドーム内で何らかの仕事を任され居住を許可された異星人たちの数は少なくない。彼らの持つ高い技術と知識はフィギュアのヒトにとってはまだまだ必要だった。その中でも、ほとんど「人間」そのもの、といった姿の異星人もいたから、姿形だけで言えば、実際フィギュアのヒトの、「人間」に対する抵抗感は薄かった。

「連絡が付かないのは、元素子、ノキユ、ハルモ、フェイクスの4人で間違いないな?分かった。すぐそちらへ向かう」

九重は耳元の無線機でドーム生徒会のメンバーと連絡を取り合う。スナフのことは伏せておいた。

「戦闘は済んだのかね」

「ええ、ですが問題がありまして。このタイミングならとお時間作って頂いたのですが、申し訳ありません」

「優先すべきことをまず片ずけなされ。ワシの方は何時でも協力するのでな」

「ありがとうございます。そう言って頂けると助かります」

九重が異星の医師の自宅から出る時、医師が一言声をかけた。

「くれぐれも、用心することだ。お互いにな」

「はい」


九重は生徒たちに指示を与えたあと、前衛部隊基地へと向かう。

ドームの外周を囲む、リング状に設置された基地内の、キグルミハンガーデッキに前衛部隊隊長ガゼル・クランカランはいた。

「使える運搬船とキグルミをかき集めろ!準備が出来次第、すぐ出るぞ!」

ほとんどが10代に見える整備部の若者たちが、数えるほどの大人に従って、先の戦闘で損傷の少ないキグルミの補修を急ぐ。

デッキ前方の射出口には数機の渦流ホバーの運搬船が用意されていく。

その運搬船の間を、全身武装の戦闘フィギュアに着替えた前衛部隊の大人たちが駆けていった。

「ガゼル教官!」

九重は戦闘用頭部にすげ替える直前のガゼル・クランカランに声をかける。

「九重さんか」

「出るんですか?」

「当たり前だ。斥候が元素子のキグルミが敵に連れ去られたのを見ている。放っておくわけにはいかん」

「たぶん、うちの生徒も一緒です。運営は出るなと言ってるらしいですけどね」

九重は中間管理職でしかない学校長の苦し紛れの言葉経由で、ドーム・コミュ最高運営委員会の判断をすでに聞いていた。

「だろうな。だがおめおめそんなものに従っていられるかよ。上はたかが盗賊なぞ無視するつもりなんだろ」

「例の盗賊ですか」

「おそらくな。他のコミュでも襲撃にあったと聞いている。これ以上奴らをつけ上がらせん!もちろん、元素子たちも助ける!」

そう言うと、ガゼルは戦闘用頭部を装着してキグルミのコックピットに入った。

「生徒たちをよろしく!出来れば上の連中の動きを抑えてくれ!」

「了解です!やってみます。ご武運を!」

九重は運搬船へと歩いて行く、ガゼルの乗ったキグルミから離れた。自分にドームの運営委員会を牽制出来るとは思えなかったが、ガゼルに向けて発破をかけた。



「奴隷に爆弾を埋め込んだのはキルス・スラブタルフィーギの指示で間違いないのだな」

「はあ」

「まったく、息子も息子ならそれを放置する親もどうかしている!」

トリティーラ・スロウは「スラブタルフィーギ」の名で知られている盗賊の旗艦、地上戦艦の甲板の上で盗賊の医師団に問いただす。

「キルスに人質を連行させただけでも少しは物を考えている、というところか?」

盗賊、「スラブタルフィーギ」には決まった定住場所はない。活動するある範囲のテリトリーはあるものの、渦流燃料を使った低空浮力によるホバリングで移動する地上戦艦や居住船など複数の地上船団で構成された、移動コミュニティである。盗賊の構成員は多種族の異星人の集団であり、はっきり言えば不法滞在者の集まりであったのだが、地球生まれの者も多く、純粋な地球外種族の集団とは言えなかった。

捕らわれた元素子たちのキグルミは船団の一隻に収容され、元素子、フェイクス、ノキユ、ハルモのドーム・コミュの四人は盗賊の旗艦、スラブタルに連行、そして元々スラブタルフィーギにいたスナフは奴隷船に引き戻された。

スラブタルの艦橋には盗賊の首領であるニニック・スラブタルフィーギとその妻であり副首領のガルハナ・スラブタルフィーギが鎮座していて、その二人に元素子たち四人が対峙している。船団内では異形の者もいたが、ここスラブタル艦橋にいる盗賊たちの外見は比較的記録にある生身の「人間」に近かった。


自ら人質になることを申し出たノース・ノキユは盗賊のボスに会うまでに頭をフル回転させていた。

恰幅のいい体のニニックは艦長席にふんぞり返ったまま、ノキユの主張を聞いている。

「交渉に来た?貴様、人質になると言ったんだろう?」

「だ、だから、それは口実で、改めて取引をしたいと言っています!」

普段は冷静のノキユもかなり苦し紛れだった。

「それなりの対価をいただければ、渦流燃料を引き渡します。商売の取引です」

「あたしら盗賊に何を言うのかと思えば、お笑い草だわね。子供の戯れ言じゃないの、ねえ?」

ガルハナは呆れてニニックに振り返る。

フェイクスはノキユに助け船を出したかったのだが、名案が浮かばない。ハルモに至ってはビクビクして突っ立ったまま。元素子は隙あらば他の三人とともにここからどう脱出するかだけを考えていた。


「取引をしたいというのなら、そちら側で根回しはしてきたのかね?それともその場しのぎかね?」

「トリティーラ、口を挟むな」

ブリッジに入ってきたトリティーラをニニックが抑える。

ノキユは足のふるえが止まらず、フィギュア腹部内の渦流魂の中心が上半身へと急速に浮いて、卒倒しかけたが、それをフェイクスが後ろから支えた。ノキユはそのフェイクスの手を振り払う。その仕草に感謝と恥ずかしさがない交ぜになった感情があった。そして、

「ドーム・コミュ側にも、わ、私が交渉します!」

言ってしまった、とノース・ノキユが思った。


「君たちは我々の人質だ。交渉権はこちらにある」

トリティーラが会話の主導権を押さえる。

「えっ」

「トリティーラ、貴様は出しゃばるな、こんな連中なぞ、フィギュアの皮を剥いでやれば済むことだ」

「渦流魂の連中に手を出せば、トライアングル星雲の裁定者たちがどう出るかわかりませんよ?」

「裁定者たちなぞ、一枚岩ではないのだろう!そう簡単に動きはせん!」

「怖いのはスナフとキルスですか?彼らの手綱をちゃんと取らなければ、いつか痛い目みますよ?」

「貴様、どちらの味方だ」

「余計な血は流したくない、といってるんです。こちらの戦力、労働力は無駄に失いたくはない」


「渦流魂が欲しいのなら、俺たちのドームではなく何故端末から直接奪わない。それが出来ないのはやっぱり渦源流も怖いんだな。意気地がないんだな」

盗賊のボス、ニニックとトリティーラの言い争いに、フェイクス・オリジが割って入った。

「貴様!」

「つくづく、いけ好かない人形のガキ共だわ」

ニニックが激昂し、そのとなりの、その豊満で露出度高めの肉体を威圧的な色気として使うガルハナがシートから立ち上がった。

フェイクスとしてもこれがただの煽りでしかないことは分かっていた。ただ、盗賊側も一枚岩ではないことを察して付け入る隙はあると感じた。少なくとも話を引き延ばせる。時間稼ぎが出来る。

「ほう」

トリティーラが乗ってきた。

「俺たちがあんたらの人質なのはいい。あんたらがドーム・コミュと交渉する時の材料に使えばいい。問題は交渉の仕方だ」

「フェイクス…」

ノース・ノキユが不安そうに後ろのフェイクスの方を振り返る。

フェイクスは、バカ、お前は黙ってあいつらの威圧感に負けなきゃいいんだよ、と、口には出さず、視線だけで答えたつもりだった。

「あんたらがドーム・コミュの自警団になって俺たちに協力するってのはどうだ。それが渦流燃料を引き渡す対価だ。こっちも人手不足で俺ら子供がかり出されるくらいだからな、正直、助かる。これは取引じゃない。提案だ」

元素子は一瞬ハルモ・ルニーに寄りかかる。そして小声で、

「…ごめん、ちょっとだけ支えてて」

ハルモはそれを、元素子も辛いんだと受け取ったが、元素子には別の理由があった。
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テーマ : 創作・オリジナル
ジャンル : アニメ・コミック

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http://d.hatena.ne.jp/tobofu/
でアニメ感想系まがいのことをやっていますが、こちらはオリジナル創作漫画、小説の発表用のブログです(時間がないときや事情によってはアイデア、プロットレベルのものを提示するのみ、になってしまうかもしれません)。
その他総合的なプロフィールはhttp://www.geocities.jp/tobofu/
参照。

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