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「渦流の国の少女・スラブタルフィーギの襲撃」(10)

元素子のキグルミがスラブタルフィーギ船団副艦の貨物デッキまで破壊したことは、スナフの目の前に副艦格納庫に繫留されていた有人戦闘端末、元素子たちの言う「カカシ」を、「これに乗れ」と言わんばかりにショートカットで見せて、カカシに嫌悪感を抱いているスナフに躊躇する隙を与えずに搭乗させる。

カカシに火を入れ、機体底部に吐き出した複数の青白い渦流の玉の回転速度が増し、やがてオレンジ色の光の帯に変化してカカシ全体を浮かした。

生き残る為の訓練としてこのカカシの操縦も必須だったから、カカシを外へと移動させる間、コックピット内から可能な機体のチェックは既に癖になっていて、スナフはキルスの動きを気にしながら無意識のうちに済ませていた。

間違いなく、キルスは追ってくるはずだ。

破壊された天井から格納庫デッキへ上がると、上半身を起こしたキグルミの背部近くに出た。キグルミは前方の甲板に続く開け放たれた搬入口から、他のカカシや地上戦艦からの攻撃を受けていた。副艦はすでに放棄され、自動運転のままで、乗組員は次々と退去していた。

「乗っているのは、元素子なのか!」

スナフはカカシのコックピットハッチを開いて顔を出し、キグルミに自分の姿を相手に見せるようにしながら叫んだ。

「スナフ、スナフなの?」

元素子は渦流シールドで攻撃を防ぐので手いっぱいで、スナフを確認するのがやっとだった。

「フェイクスたちを助けたいんだけど!」

元素子は今度は渦流ワイヤーをスナフのカカシまで伸ばしてそう言った。その言葉にスナフは反応してコックピット内に戻り、カカシのカメラで前方の地上戦艦艦橋中部あたりに、手摺につかまり身動きが取れないでいるフェイクス、ハルモ、ノキユの三人の姿を見つけた。

「フェイクスたちをそのカカシに乗せてやって!」

「元素子はどうするんだ。そのままじゃ動けないんだろう?元素子もこっちに移れ!」

「今、フィギュアがないからそれは無理なんだよ!」

「…わかった。じゃあ、こっちが足になる」

「足になる?」

元素子が意味が分からないでいると、瓢箪あるいは洋ナシのような体型だったスナフのカカシが変形し始めた。そこへ変形を止めるような攻撃が来た。

それがキルスが乗ったカカシによるものなのは、相手を確認しなくてもスナフにはすぐに分かった。初弾を放った後スナフの出方を伺うかのように、スナフ機を攻撃したカカシはしばらく佇んでいる。

スナフのカカシが搬入口の外側へ突進し、キルスのカカシもスナフの目論み通り追ってきた。そしてそのまま副艦の外に出てジャンプする。少なくともスナフのカカシは盗賊に向けて味方の識別信号を出しているので、盗賊の攻撃が一瞬止んで道を開いてくれた。



「どっちが味方なの?」

ハルモ・ルニーが向かってくる二機のカカシを見て言う。

「うわっ」

フェイクス、ハルモ、ノキユ三人の目の前でカカシの一機が急停止し、その場でホバリングしている。カカシのコックピットハッチが開いてスナフが手を伸ばす。

「早く!乗れ!」

しかし後ろのもう一機のカカシが内蔵のバルカン砲を撃ちながら突っ込んできた。

「伏せろ!」

フェイクスがハルモとノキユ二人を押し倒す。

スナフはカカシをフェイクスらの盾にし、

「見境なしか!キルス!」

そのままくるんと回転させキルスのカカシに向き直って、アームを伸ばしてぶん殴ろうとしたが、キルス機のアームに掴まれる。二機のカカシは取っ組み合う形でしばらく対峙する。その姿には似合わない機械類が軋む音がする。格闘戦ならはっきりと手足がある人型、ヒトノカタチの方が有利なのだが、カカシにはそこまでの変形機構はなく、同型機である両者とも条件は一緒だった。しかもこういう時にキルスはバルカンを使ってこない。そこまでスナフが読んだわけではないが、この一瞬の僥倖は有り難かった。

スナフはカカシの背中のハッチを開けてフェイクスたちを収容した。そしてアームを槍状に窄ませてキルス機のアームをすり抜ける。そのまま下へ落ちてキルス機の懐から脱し、地表近くでジャンプをかけて旗艦スラブタルから離れた。

スナフはカカシを平べったいエイ状に変形させながら、元素子のキグルミのもとへ戻った。

「俺が台になってやる。ここから脱出するぞ」

元素子はキグルミをスナフのカカシに乗せると、カカシから出てきたフェイクスたちをキグルミへと誘導した。

フェイクスたちがキグルミのコックピットに移るあいだ、スナフは索敵、特にキルスの動きに注意を払いながら元素子に言う。

「脱出する前に、こちらの頼みも聞いてくれないか。奴隷船の仲間を助けたい。それまで付き合ってほしい」

「わかった。奴隷船の位置は?」

元素子は渦流ワイヤーをスナフのカカシに常時接続させて会話する。スナフがカカシを副艦から離脱させようとした時、

「ちょい、戻して!船に近づけて!」

キグルミの足で副艦の腹を蹴り、コントロールを失った副艦はそのままヨロヨロと隣で併走していた旗艦に激突。旗艦船体が大きく揺れ、反対側のもう一つの副艦と玉突きになる。

「これで邪魔が少なくなるでしょ!」

「助かる!」

スナフはキグルミを背負ったカカシの加速をかけた。

この時、混乱の中、盗賊のガルハナ・スラブタルフィーギは面倒事を嫌い、旗艦から副艦へと乗り換えるところだった。ガルハナに見捨てられた夫の二ニックは旗艦スラブタル艦橋の見張り所部分に出て、ガルハナの姿を追う。

そして元素子のキグルミが蹴った副艦が旗艦に激突した時、ニニックは艦橋から落ちた。その後、ニニックの姿を見た者は誰もいない。もちろん、元素子たちがそのことを知るよしもない。

キグルミを背負ったカカシの後方で爆発があがる。隊列が乱れた地上船団の一部の接触の連鎖反応で引き起こされたものらしい。

前方でも右往左往する地上船の中、その動きに明確な意志を感じさせる船があった。

「来てくれた。あの船だ」

スナフは奴隷船の仲間たちが、スナフが奴隷船に戻った僅かな時間にした脱出のための打ち合わせ通りに動いてくれているのを見て心強く思った。

奴隷船から三機のカカシが舞い降りて、スナフが送ったカカシの目を使った光信号に反応してくれた。

スナフに向かって地表をホバリング移動で近づいてくる三機のカカシだったが、突然右端のカカシが爆発し、火だるまになって地表を転げ落ちた。続いてその隣の一機、二機目が爆発した。三機のカカシに仲間が乗っていたかどうかは定かではないが、スナフは前方、奴隷船の背後から上昇する一機のカカシの姿を認めて、激昂して叫んでいた。

「逃げろ!逃げてくれ!」

キルスのカカシと思わしきものはそのアームを奴隷船の艦橋に振り下ろした。

「貴様ああっ、何をやったのか分かっているのかあっ!」

スナフはカカシの加速をさらにかけ、キルスに向けて突進した。自制心が振り切れて無意識のうちに内蔵バルカンを撃ち続けた。

元素子はキグルミがカカシから振り落とされまいと必死にしがみついた。

「スナフ!どうしたの!」

スナフには元素子の声が聞こえない。叫び続けるスナフの心の中に、忘れ去ることはなかったが完全に制御したかに思えた幼少時の記憶がなだれ込んできた。
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テーマ : 創作・オリジナル
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http://d.hatena.ne.jp/tobofu/
でアニメ感想系まがいのことをやっていますが、こちらはオリジナル創作漫画、小説の発表用のブログです(時間がないときや事情によってはアイデア、プロットレベルのものを提示するのみ、になってしまうかもしれません)。
その他総合的なプロフィールはhttp://www.geocities.jp/tobofu/
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