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「渦流の国の少女・スラブタルフィーギの襲撃」(11)

最も古い記憶は怖いほど膨大な数の星が瞬く夜空を背景に、天の頂へと昇るいくつもの光の筋。
それは地上から自分たちの手の届かない距離にまで駆け上がって去って行く宇宙列車を連想させる。
膨大な数の星々は、そんなにも膨大な数の存在が自分たちをただ見ているだけで、何の手助けもしてくれないのだ、という自覚を幼少のスナフに強烈に植え付けた。

宇宙列車も自分たちをただ捨てて去って行くように見える。

実際に捨てられたかどうかは定かではないが、その思い込みは、スナフの中で、誰にも頼らず、自分たちだけで生きていかねばならない、という刷り込みに変わる。

圧倒的に美しくそして神聖さというよりはそれを見上げる者たちにとって冷たさを伴った夜空とは反対に、瓦礫に埋め尽くされた地上では、スナフたちがいる暗い穴蔵から見える、別の同じような穴蔵に向けて光が放たれて、その光の筋が舌となって穴蔵をなめ回すたび、青白い光の玉がいくつも舞い、それに照らされた地面をヒトノカタチをしたもの、不完全なヒトノカタチ、元からヒトノカタチからほど遠いものが這い出て、光の舌を放った主から逃げ惑う。

光の舌の主の、その回転する三つの光のうちの一つが口となって、穴蔵から掻き出され、舞った光の玉を吸い込み終わると、再び口から舌を出して今度は穴蔵から逃げ去ったヒトノカタチをしたものも逃がさず捕らえる。ヒトノカタチが砕けて、そこからも同じ青白い光が現れて、光の舌の主の口に吸い込まれていく。光の舌の主の体内に無数の光が渦巻き、その流れが暗闇の中で光の舌の主の瓢箪あるいは洋ナシ型のシルエットを露わにした。

それが「端末」と呼ばれている存在であること、ヒトノカタチが「フィギュア」と呼ばれていることを、至近の穴蔵でただ見るだけの彼らはもちろん知るはずもないし、知ることになるのはずっと後のことだ。

この今はただ、いつかはヒトノカタチのフィギュアと同じく、自分達も狩られるのではないかと、光の舌を放つ魔物に怯えていた。

スナフは本能的にあの魔物には近づいてはいけないと感じていた。ハッカーニは狩られる恐怖から死ぬまで自分たちとフィギュアとの区別がつかなかった。しかしキルスは、スナフとハッカーニの制止を振り切り、端末の内部で渦巻く光に惹かれて、端末に向かって走り出す。そして、端末群が去って荒らした土地に倒れたままのキルスをスナフとハッカーニが見つけたとき、キルスは魂が抜かれたようだった。

きっとキルスはあの時、本物の「カカシ」、「端末」の中で渦巻く魂の光に惹かれて、フィギュア人間たちの言う「魂」とは別の「魂」を狩られたのだ。いや、違う。本物の「端末」はキルスの「魂」なぞ相手にしなかったのだ。キルスの「魂」が勝手に、「端末」について行ったのだ。

キルスの内面が見えない以上、スナフは想像力でそう補完するしかなかった。そんな想像が、スナフの心の中、「魂」の中で渦巻いた時、スナフは泣いていた。だが、それが当たっているかどうか誰にも分からないし、結局はスナフによるキルスの内面のねつ造でしかなく、共感もされないだろうから、スナフの流した涙も、勝手な代償行為でしかない。その思いは誰も慰めてはくれない。それも承知しているから誰のための涙なのかも分からずそれゆえ涙が流れ続ける。

それとも、元素子に話したら彼女は分かってくれただろうか?

でも、今はお互い別々の機体にいることが有り難がった。



「聞こえる?スナフ!どうしたの!開けて!」

もはやキルスではなく、自身の行き過ぎた想像力相手に格闘して、ただ閉じて泥沼に落ちていくだけのスナフに向けて元素子の声が何度も何度も放たれた。

元素子はスナフからの返答がないので、半渦流魂状態のフィギュアのままでキグルミのコックピットハッチから飛び出し、カカシの背中を渦流弾で撃つ。しかし、カカシの表面にコーティングバリアされた皮膜が渦流弾を弾いてしまう。

「スナフ!ハッチを開けて!開けなさい!」

スナフは元素子の言葉にすがるように、コックピットハッチの開閉スイッチを押した。

カカシのコックピットハッチが開いたと同時に元素子は中に滑り込んだ。

「スナフ!」

元素子は声をかけるが、スナフは気絶していた。

「フェイクス、キグルミを下の奴隷船に降ろすわよ!その後、渦流魂の接続を切るから!」

「そっちはどうなってんだよ!」

元素子は返答することなく、カカシを掴んでいたキグルミの手を離した。そしてキグルミのバーニア渦流噴射で落下速度の軽減と姿勢制御を行い、奴隷船の甲板に着地させた。

着地した途端、元素子が渦流魂を自分のフィギュアに戻したので、キグルミが足を滑らせる。

「力を回せ、踏ん張れよ!」

代わりにフェイクスがキグルミを着るしかなかった。

「無茶言わないで!ブースター代わりなんか、出来ないよ!」

そう叫んだハルモ・ルニーと、ノース・ノキユの二人が悲鳴を上げた。

フェイクスは無茶は承知でキグルミを動かそうとしたが、土台になっている奴隷船自体が迷走していて足場が安定しない。

キグルミ自体がキルスに破壊された艦橋正面まで滑りぶつかってようやくキグルミの動きを止めた。

「ふう、あいつの言った通り、やっぱりこいつに手足を使った操縦系は必須だな。訓練次第だって言っても魂に頼りすぎだろ。ノキユ、ドームに戻ったら提案してくれないか」

「ええ、そのつもりよ。その前にこの船もなんとかしないと」

「わかってる。ちょっと待ってくれ。はあッ」

負荷の大きいキグルミから渦流魂をフィギュアに戻したフェイクスは息を整えつつ答えた。

「ブリッジがやられてしまったから、直接、エンジンを止めるしかないわね」

「そうだな。同じ渦流燃料を使うんだ。システムはドームの運搬船と同じだと思うけどな」



一方、元素子は気絶したスナフの横でカカシの操縦を試みたが、

「不時着させることが出来ればと思ったけど、無理だな…」

コックピット内に元素子とスナフ二人を乗せたカカシは、キルスのカカシの左側を擦り抜け、右へ大きく旋回しながら地表に落下しつつあった。

元素子は仕方なく、カカシからスナフを抱えて飛び降りる。地表に落ちたカカシは大破した。

気絶したままのスナフを抱えたまま地表に降りた元素子は、二人を見つけたらしい、前方から来るカカシに対して気を張った。そしてまだ使えそうな武器を数えながら戦闘態勢に入った。

あのキルスに自分は勝てるだろうか。あるいは逃げ切れるか。

キルスのカカシは元素子とスナフの目前で止まった。

「キルス…」

「スナフ?」

スナフが目を覚ました。そして、

「元素子、僕を殺してくれないか」

「えっ、何言ってるの!」

「いいから!」

元素子はフィギュアの手のひらから渦流の粒子を排出してナイフ状に変形させて、それをスナフののど元に突きつけた。
本当に殺すつもりではない。スナフが頑固なのでフリのつもりでしたことだった。

カカシからキルスが慌てて出てきた。ゆっくりと元素子とスナフのもとに歩み寄った。ただ、その表情には困惑の色が浮かんでいる。身体が勝手に動きながら、自分が何をしているのか分からないでいるようだった。

元素子はどうしていいか分からず、スナフと一緒に後ずさった。


その時、元素子の耳に幼少時から嫌というほど聞き慣れた駆動音が唐突に鳴った。
よく知っていた駆動音だったから、元素子はとっさにスナフを抱えて渦流噴射で地表からジャンプした。

瓦礫の地表が波のように盛り上がり、幾つもの本物の「端末」が姿を現した。

そのカカシではない「端末」にキルスは突き飛ばされて、宙を舞った。
スナフは落下するキルスの姿を追い続けたが、見失ってしまった。


元素子の元に、ノイズ混じりの無線で、ドーム・コミュ前衛部隊隊長ガゼル・クランカランから本物の端末群が迫っていると知らされたのはその直後のことだった。
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テーマ : 創作・オリジナル
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でアニメ感想系まがいのことをやっていますが、こちらはオリジナル創作漫画、小説の発表用のブログです(時間がないときや事情によってはアイデア、プロットレベルのものを提示するのみ、になってしまうかもしれません)。
その他総合的なプロフィールはhttp://www.geocities.jp/tobofu/
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