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「渦流の国の少女・スラブタルフィーギの襲撃」(12/最終回)

九重・ヴァン・花蓮はドーム・コミュ運営委員長の執務室へ呼ばれていた。

九重自身は、コミュの上層部にコンタクトを取ることを半ば諦めていたので、拍子抜けしたと同時に、いつの間にか、自分の行動が監視されていたからかもしれない と感じて身が震えた。しかし、彼女にとっては向こうから与えられたチャンスでもあった。気がかりなのは、元素子と生徒会の面々ではあったのだが、この機を逃すわけには行かなかった。

ケープを纏って、制服だけで部下に威圧感を与えないような無駄な装飾がなく身の軽さを連想させる身なりの、初老近い人物だった。事が起きれば、部下に任せず、自分から行動するタイプのようだ。

「あの二人の少年、スナフとハッカーニとか言ったか。君は何故彼らに拘るのかね?」

物腰の柔らかい言い方だったが、核心は突いてきている。

「あの二人の体内には、小型ですが強力な爆弾が仕掛けられていました。ハッカーニの方はドームに着く前に爆破されたようですが、スナフはそのままでドーム内で爆破される危険性がありました」

「ただ、彼の爆弾は無事処理出来たのだろう?このドームの警備体制は万全だよ、気に病むことはない」

「その後、あの盗賊の手で次の人間爆弾が送り込まれたらどうするのです」

「九重君、建前は無しにしよう。何が聞きたいのかね」

「そうですか…それでは、すでに死亡していたハッカーニを検死後も何故解剖する必要がありましたか?」

「『人間』の末裔の可能性、その証明、とでも答えれば満足するかね?」

「どうだったのです?」

「残念ながら、確証は得られなかったよ。裁定者たちに照合を求めた結果、君も一般的にもよく知られている星国の者たちの遺伝子コードと一致した、と言ってきた。そういうことだ。いずれ、メディアで公式発表がなされるだろう」

九重は黙っている。

「以上だ。下がりたまえ」

九重は引き下がるしかなかった。



「ここは我々の狩り場である」とでも宣言するかのように現れた本物の端末群の登場で、盗賊の船団はさらに混乱したが、大半の者たちの考えることは同じで動ける地上船のほとんどが一斉に後退し始めた。端末の狙いはもちろん盗賊ではなく、渦流魂のヒトで、元素子たちと、ドーム・コミュ前衛部隊がこの場に集まったのを察知したからだ。そして、時刻から言えば、元素子と前衛部隊を狙いながらそのままドーム・コミュを襲撃する定時攻撃のタイミングでもあった。

元素子はスナフを抱えながら、渦流噴射のジャンプを繰り返し、端末から逃げ続けた。途中、前衛部隊がたどり着き、端末の動きを牽制してくれた。

ドー ム・コミュ前衛部隊随一のエースパイロットであるガゼル・クランカランはキグルミの渦流バルカン、ライフル等の飛び道具を牽制、攪乱攻撃のみで使い、手前に迫った端末をキグルミの腕で直接殴り、その衝撃で横倒しになって転げ回った端末の腹を踏み台にしてジャンプし、後方の端末に向けて今度は足で蹴りを入れた。

「ここで端末を阻止する!長くは続かない!時間を稼ぐだけだ!無理はするな!」

ガゼルの部下たち、キグルミの格闘戦に自信のある者はガゼルの戦い方を真似て端末を各個撃破していく。そうでない者は援護射撃に回った。

援護射撃の渦流弾は、端末の表面で盗賊が使った突撃部隊のカカシのバリアと同じく弾かれたが、拡散された流れ弾は動かず放棄された、渦流弾バリアのためのコーティングが完全にはなされていない盗賊の地上船をさらに破壊して、船のエンジンの連鎖爆発が端末群の流れを遅くした。

スナフを抱えたまま何十回もの渦流噴射を繰り返し、フィギュアの身体であろうとさすがに疲れが見えてきた元素子はようやく目前で停止している奴隷船に取り付くことが出来た。フェイクスたちが止めてくれたのか、偶然止まったのか分からないが、最後のカスカスの噴射で甲板の上に降りた。

「スナフ、走って!残った仲間を助けるんでしょ!」

元素子は意識が朦朧としたままのスナフの手を引いた。スナフはヨロヨロと元素子に付いて、甲板の上で尻餅をついたかのような格好のキグルミに向かって走った。

キグルミのコックピットハッチは開いていて、中でハルモ・ルニーが泣きじゃくっていた。

「フェイクスのバカ!ノキユと行っちゃって、一人で怖かったんだから!」

フェイクスはわかったわかったとハルモの肩を抱き、なだめ、ノース・ノキユはハルモの背中をやさしく撫でていた。

そのコックピットの奥には一人の異星の男がいた。負傷していて、取りあえずの応急処置はされているようだ。

「フェイクス!」

「元素子か」

「そいつは?」

「こいつのおかげでこの奴隷船を止められたんだがな。あの盗賊の戦艦の艦橋にいた奴だよ」

「盗賊の女に撃たれた男よ。生きてたのね」

ノキユが補足した。トリティーラ・スロウという名の男であることを元素子たちが覚えているかどうかは定かではない。

「いいの?敵でしょ?」

「利用価値はあるだろう。こんどはこっちの人質になってもらう」

「人質でも何でもやるさ。俺はこんなところで死にたくないんでな」

苦しそうな息をしながらトリティーラは答えた。

「船は止められたけれど、もう動かせないわね。スナフの仲間はどうしたらいいかしら」

「ガゼル教官から聞いた。ドーム・コミュ前衛部隊の運搬船がもうすぐ来てくれる。それで運ぼう」

元素子はそう言いながら、スナフをトリティーラの横のシートに寝かせた。

そして運搬船の到着と、端末の定時攻撃が終わるのを待った。もし、端末が前衛部隊のガードを突破して、こちらにやって来たら、元素子一人がフィギュアの身体で戦わなくてはいけなかったが、運が良かったと言うべきかそういう事態にならずに済んだ。



冷静に見えて負けず嫌いの、ドーム・コミュ運営生徒会長のノース・ノキユは、あの盗賊のボスの女に舐められたこと、威圧感に自分が負けてしまったのが余程悔しかったのか、そのことがバネになって後処理の指揮を自ら執り、ドーム・コミュの運営委員会に直接、スナフと彼の奴隷扱いされた仲間、盗賊で渦流燃料販売に関わっていたトリティーラ・スロウ、また、戦場で逃げ遅れて行き場を失った盗賊の者たちのドーム・コミュへの身柄引き取りを要求した。特にトリティー ラ・スロウの握っていたスラブタルフィーギ盗賊の渦流燃料商圏の一部をドーム側が接収することになるのだから、ドーム運営にとっても悪い話ではない。前衛部隊が倒した端末からの渦流魂の回収も忘れてはならない大事な仕事であり、ノキユの指示のもと、元素子が指揮を執った。

さらにスナフの強い要望で、墓標ベースにスナフの死んだ仲間も一緒に弔われることになった。端末からの渦流魂回収後、元素子や前衛部隊によって遺体捜索が行われ、フェイクス、ハルモ・ルニーも協力した。

スナフは死んだ仲間全員の名前を覚えていた。




盗賊スラブタルフィーギのドーム・コミュ襲撃から約三週間が経とうとしている。

ドーム運営生徒会の定例会議の後、比較的広い教室内で、ノース・ノキユ、フェイクス・オリジ、ハルモ・ルニーの三人だけが残っていた。

「そう、まだ元素子さんはスナフに協力しているのね」

「協力と言うより、スナフがキグルミ使って働いてるのを見守ってる感じかな。スナフ、だいぶ元気になったみたい」

整備部との交渉役であるハルモはそこで働くスナフの元へ通う元素子と話す機会も多いのだろう。スナフはノキユの提案が通って自分でも使える操作系の付与が裁定者から許可されたキグルミを操縦し、破壊されたドーム外壁の補修を手伝っていた。

「元素子、スナフのこと、気に入ってんだな」

フェイクスは特に意味もなく、何となく言ってみた。

「うーん、ちょっと違うかな」

「どう違うんだよ」

「スナフは自分に似すぎてるんだって。自分を責めすぎるところがあるって。だから、惹かれるけれど、付き合ってもお互い駄目になるかもしれないし、あまり深入り出来ないって。でも気にはなるからスナフが一人でやってけるまで見守ることくらいは出来ないかって、言ってた」

「そう」

「そうなんだ。まあ、俺にはそういうの、よくわかんねえけどな」

「え、わかんないの?わかってよ」

「ハルモさん、何を言っているのかしら?」

そのノキユの言葉はハルモに対する牽制である。



その後、何となく三人一緒に帰宅する流れになったが、途中で九重・ヴァン・花蓮と出会い、フェイクスだけが九重に呼ばれ、ノース・ノキユとハルモ・ルニーの二人だけが先に帰った。

「いや、君が今回の件、どう感じたのかと思ってな」

九重はフェイクスをドーム外縁のテラスに誘い、遠く広く瓦礫の荒れ地が続く先に夕日が沈むのを見ながら言った。

「どうも何も、一介の学生ですからね。感じたものがあったってどうにもならないでしょう」

「そうか?」

「そうですよ。元素子とも、スナフとも違う。あの二人の事情は詳しくは知りませんし、知ろうとも思いませんけど、でも俺はここじゃないとやってけないですよ」

「そうか…。では、君一人の問題じゃなくなった時、もしもの時には、生徒会の連中を説得して、私に協力してくれるか?君は避けていたくても、当事者になるかもしれないんだぞ?」

「…先生、何考えてんですか?」


フェイクスには九重が言わんとしていることが漠然とだが分かった。このドーム・コミュの組織で生きていくことの煮え切らなさが自分にもあったからだ。
そのことをノース・ノキユにも確認してみたかったのだが、なかなか切り出せないでいた。だから割と直接的に聞かれても答えようがない。

「ん、ま、その時はその時だが、考えておいてほしい」

そう言って九重・ヴァン・花蓮はテラスからドーム・フロア内に戻って行った。


フェイクスはただ黙ったまま、九重を見送るだけだった。
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テーマ : 創作・オリジナル
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でアニメ感想系まがいのことをやっていますが、こちらはオリジナル創作漫画、小説の発表用のブログです(時間がないときや事情によってはアイデア、プロットレベルのものを提示するのみ、になってしまうかもしれません)。
その他総合的なプロフィールはhttp://www.geocities.jp/tobofu/
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