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渦流の国の少女・インターバル特別編「渦流魂の花粉症」

ドーム・コミュ「スラタリア」総合高校生徒会会長のノース・ノキユがマスクに眼鏡装着で定例会議に現れた時には、生徒会のメンバー全員が驚愕した。

「ノキユ、どうしたの、その格好!?」

ハルモ・ルニーが開口一番に聞いた。

「だ、だんでもないわ。会議始めましょう」

なんでもないわ、と言いたかったらしい。明らかに鼻声だった。

「風邪引いてんのか。無理しなくてもいいんだぞ。保健室行け。あとは俺が仕切る。そんなに大事な案件があるわけでもないはずだ」

「べ、別に、風邪ではないわ。熱なかったもの。フィギュアの調子が悪いのかもしれないだけよ」

フェイクス・オリジの心配に、ノキユは意地を張って言った。

「じゃあ、今日の議題だけど、わ、わっくしょい!」

ノキユはマスクが口から浮き上がるほどの大きなくしゃみをした。そして、恥ずかしかったのか、そのまま教壇の下に隠れてしまった。

「だから、言わんこっちゃない」

フェイクスが促すのを待たずにハルモが鞄からポケットティッシュをいくつか取り出して教壇の後ろでしゃがんだまま出てこれないノキユに渡した。

ティッシュでぶーっ、ぶーっ、と鼻をかむ音がして、ノキユは恥ずかしさでますますそこから動けなくなった。

「いいから、ハルモ、付き添ってやってやれよ」

ハルモに促されてノキユはようやく立ち上がり、鼻をズルズルすすりながら保健室へと、定例会議のために借りている教室から出て行った。

やれやれ、とフェイクスは教室の一番後ろの席から立ち上がり、教壇に立った。こういうの苦手なんだけどな。そしてノキユが用意してきたレジュメに目を通した。

目を通している間、生徒会のメンバーの一人が手を上げて発言した。

「あ、あの、生徒会長みたいな症状のヒトが最近増えてるんですよ」

その発言を証明するように、ノキユのレジュメにも同じことが書かれていた。

「花粉症問題について」と題され、ノキユらしく綿密な聞き取りをしたのか、その症状が詳しくリストアップされていた。

「そんなに問題になってるのか?」

「いや、まだそれ程ではないようだけど、患者が増えてくるとまずいことになるんじゃないか?」

別のメンバーが言った。

フェイクス自体、そうのような症状はまったくなかったのでほぼ無関心だったのだが、ノキユは自分がそうなってしまったこともあり、早めに手を打とうとしたのだろう。

花粉症については授業で習ったくらいで、太古の「人間」がかかる病気という程度の知識くらいしかなかった。ドームの地下図書館の古文書を丹念に当たれば対処方法も見つかるかもしれないが、それは「人間」に対してのものだ。渦流魂(ウズルコン)と呼ばれた物理的に存在する「魂」だけの自分たちに通用するとは思えなかった。

まさか、渦流魂の自分たちにとっての外敵でありながら、生命の源である「渦源流(ウズゲンリュウ)」が放ったウィルスか何かか?それとも、地球を外から観察しているだけの星国の「裁定者」が俺たちの進化を妨害するためにやったことなのか?

だったら、大事になる可能性がある。

フェイクスは杞憂かもしれないと思いつつ、生徒会のメンバーに引き続き調査するよう指示を出して、ノキユが連れられた学校の保健室へと向かった。

保健室ではノキユはベッドに寝かされ、ハルモが呼んだのか、九重・ヴァン・花蓮先生も様子を見に来ていた。九重は保健医も兼ねていたからだ。

「人間」がかかる「花粉症」の症状はあるものの、風邪ではなさそうだったのでノース・ノキユの意識ははっきりしていた。

「フィギュア、着替えればいいんじゃないかな」

ファッション感覚で、「服」感覚でしょっちゅうフィギュアという、魂、渦流魂の器を「着替える」ハルモは軽々しく言った。

「そう簡単に言うなよ。渦流魂と身体であるフィギュアの相性はデリケートなんだぜ」

フェイクスはフィギュアの看護師を目指している妹のトウナ・オリジの受け売りで言った。

「ハルモはどうなんだ。花粉症の症状出てないのか」

「うん、風邪は引くけど、こういうのは初めて見る」

「せ、先生は何かし、し、ふぇっくしょい!」

「だからお前は黙ってろよ」

「ヒトの気も知らないで。辛いのよ?」

ノキユはくしゃみ、と鼻から流れ出て止まることのない液状の渦流(鼻水)、目のかゆみに悩まされていた。

「私も経験が無いからよく分からなくてな。最悪、ハルモ君の言うことも一理あるかもしれん。一時的に渦流魂を別のフィギュアに移して、今のノキユ君のフィギュアを全身洗浄するか」

「渦源流の新たな攻撃、あるいは裁定者の仕業ってことはないんですか。対応遅れると大変なことになりますよ」

「それも考慮しよう。いま診療所のビアンミニ先生を呼んでる。しばらく我慢しててくれ」


「花粉症」の患者が増えているのか、ビアンミニは多忙で、その代わりビアンミニのワークショップでフィギュアのメンテナンスの勉強をしているフェイクスの妹、トウナが代わりにやって来た。

そして、ノキユの簡単な診察をした。

「お前で大丈夫なのかよ?」

「お兄ちゃん、馬鹿にしないで。これでもちゃんと教わってるんだから」

「それで、どうなんだね」

九重が聞いた。

「洗浄は必要だけれど、それほど大事ではないです。外付けの浄化装置で渦流を循環させればすぐに楽になりますよ」

「そうなの…よがったわ。トウナさんありがどう」

ノキユは鼻声で礼を言う。

「それで、原因は何だか分かってるのかね?」

「ドーム外瓦礫の細かい破片やチリに対するアレルギー反応かとも考えられたんですが、今まで長い間私たちその環境で平気で生きてきたから、それはないかもって先生言ってました」

「とすると?」

「ドーム内での生活ですね。太古の『人間』の真似して作った環境、自然物とか、それらが原因で引き起こされたものじゃないかって」

「『人間』の真似事をしたから、『人間』と同じ病気にかかるようになったってことか…やれやれ」

そういって、とりあえず安心したフェイクスは保健室から離れた。出た途端何となく鼻の奥でもぞ痒い感じがした。

「…ん?…まさかな…」

まだ開いたままの保健室の扉の奥から妹のトウナの声がした。

「あ、『花粉症』って、いきなり来るらしいから、お兄ちゃんも気をつけてね」


おしまい。
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テーマ : 創作・オリジナル
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Author:tobofu
http://d.hatena.ne.jp/tobofu/
でアニメ感想系まがいのことをやっていますが、こちらはオリジナル創作漫画、小説の発表用のブログです(時間がないときや事情によってはアイデア、プロットレベルのものを提示するのみ、になってしまうかもしれません)。
その他総合的なプロフィールはhttp://www.geocities.jp/tobofu/
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