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「渦流の国の少女・ヒトノカタチ編」 第一部「カルネアデス・スパイラル」2

スカラ・テングの工房の上空をカラスに似た鳥獣3体が旋回しながら、やがて降りてきた。スカラは工房の外に立って、彼らが降りてくるのを待っていた。スカラが彼らを呼んだのかもしれないし、定期的に交流があるのかもしれない。

鳥獣3体は地上に降りると、大きな黒い翼を収めて、ヒトのように直立して立った。
姿かたちはスカラとは違うが、スカラと同じ星の異星人だった。科学者であり、スカラは三博士と呼んでいる。生物的というより、どことなく着ぐるみのような質感を持っていたために、異形の存在であることがより強調された。外見からは分からないが、年老いた異星人たちだった。

その一体がうづるが生成した魂結晶をまじまじと見つめる。

「綺麗な魂結晶じゃ。久々にみる」
「その『うづる』とやらが生成したのか?」
「その名前は初めて聞くがの」

それぞれひと言ずつ、スカラに聞いた。

「そりゃそうだ、俺が名づけた名前だからな」
「『うづる』か、たぶんその者の噂は聞いておるよ、とんでもない渦流魂を持ってるそうだな」
「あの『渦流』(ウズル)と拮抗できるだけの力をあいつは持っているかもしれない。だから勝手に『うづる』と付けた。自分から名乗らなかったからな」
「して、もう一人の娘はどうしたのだ。こんな純度の高い魂結晶を生成する手助けが出来るくらいの渦流魂を持っているのだろう?」
「元素子か。家出しちまったよ。可愛げのない小娘だ」
「その娘にも会いたかったのう」
うづるより元素子に興味を持った博士は残念そうに言った。

別の老博士がスカラに忠告した。
「その『うづる』な、噂の『トフボフ(混沌)の渦流魂』かもしれん。深入りするなよ。研究対象としてはあまりに危険な存在だ」



ほぼ同時刻、元素子は「端末」と戦っていた。

廃墟がその周りを囲む砂漠地に飲み込まれようとしているちょうど境界線に、高く壁になってそびえる「廃ビル山脈」と呼ばれたものがあった。
行く当てのない元素子が、「廃ビル山脈」にいるということは、相当遠くまで来ていることを意味している。山脈の外側の砂漠地帯は元素子にとって未知の場所であり、さすがに、その先まで出る勇気はなかった。

「やっぱりあたしバカなんだよな、こうなることは分かっていたのに」

「廃ビル山脈」を背にして、元素子は「端末」と戦うことになった。背水の陣だった。
「廃ビル山脈」の立体迷路のような朽ちた内部に入り込めば、図体のでかい「端末」は容易に入っては来れない。自分は身を隠しながら、「端末」の隙をつけると考えた。それくらいの頭は使った。しかし、たとえ1基の「端末」を倒したとしても、また別の「端末」がやってくるだろう。長期戦になり、こちらが消耗するだけだった。

「やっぱりバカだ、あたし!」
元素子は愚痴りながら叫んで、「端末」に向かって飛び出した。スカラの工房を出たときにはいていたいつものロングスカートからミニスカートにすでにはき替えていた。

新しいフィギュアは工房で着替えた時も感じたが、本当に身が軽かった。前のフィギュアとは全然違う。
腹の中で渦流が軽快に回転しているのが分かる。今度のブーストは起動させるまでのショートカットが可能であり、加速を段階的に切り替えることで使える能力も豊富になっていた。

「ブースト1!」
一段階目の加速ということである。それで元素子は「端末」の放つ渦流弾をシールドで防ぎ、「ブースト2!物理障壁!」思ったとおり伸ばしてきた「端末」の腕を渦流の粒子が固まって出来た壁で跳ね返した。

「さすがスカラさんだ!」
これだけよくしてもらったのに、勝手にスカラの工房を出てしまって、元素子は本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

「パージ!」腕のひじ関節から先が外れ、外れた穴から渦流が噴射され、バーニアとして使って急制動を掛け、「端末」の後ろに回りこんだ。うづるが間接球を外して渦流噴射で空を飛んだのを見たスカラが模した機能だった。

元素子もうづるの戦い方を真似した。「端末」に向けて放った渦流弾はワイヤー状に「端末」に巻きつき、充分きつく絞めたところで足を踏ん張り、ワイヤーを引っ張って思いっきり「端末」を「廃ビル山脈」の壁に叩きつけた。
「凄い!」
元素子は自分がやったことながらつい叫んでしまった。

壁に叩きつけられた「端末」に、衝撃で崩れたガレキが「端末」の外皮を突き破り、血のような液体が吹き出た。それといっしょに、無数の死んだ渦流魂が「端末」の腹から吐き出された。

元素子は唖然としながらもパージした腕を付け直した。
「端末」の死に唖然としていたのではない。自分の新しいフィギュアの能力に唖然としていた。

そのことが、元素子に隙を作った。
背後から思わぬ衝撃を受け、元素子は倒れた。後ろから、耳慣れた駆動音が聞こえてきた。もう1基の「端末」がいたのだ。

元素子は立ち上がり、いったん廃ビルの壁の中に退避しようとした。
しかし、走る元素子と併走しながら、地中からまた別の駆動音が走っているのが聞こえた。瞬間、ガレキの地面を突き破ってさらにもう1基の「端末」が元素子の右側に現れた。そいつは顔にあたる部分を元素子の方に向けいきなり超至近距離の渦流のビームを放ってきた。

何とかブーストの最大加速をかけて、シールド防御でそれを防いだが、元素子は吹き飛ばされ、地面をゴロゴロところがった。

「やられる…」
必死に立ち上がろうとした元素子だったが、最大加速のブーストを使ってしまったために、ブースターは強制停止状態になっており、渦流魂も急激に疲弊しきっていた。

「そうなんだよな、いきなりうづるさんみたいに強くなれるわけない…」
間接の隙間からの熱の排気音を聞きながら、元素子は意識を失った。




気がつくと、遠くの先に何かがいるのが分かる。意識がはっきりしてくると、それが小型の「端末」と、一人の少女の姿をしたフィギュアであることが分かってくる。元素子は反射的に飛び起き、攻撃態勢を取ろうとしたが、まだ渦流魂が疲弊しているのか、体勢を崩した。

そこではじめてその少女のフィギュアが「端末」の隣に平気でいられることに気付く。
「…なんで端末といっしょに…?」

少女がその特徴的なツインテールを揺らしながら元素子のもとに近づいてくる。
ツインテールのフィギュアの少女は再び倒れてしまった元素子の頭を見下ろすように腰を下ろし、


「あなた、いい渦流の色してる」


かつて、元素子がうづるに言われたことと同じ言葉を口にした。
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テーマ : 創作・オリジナル
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でアニメ感想系まがいのことをやっていますが、こちらはオリジナル創作漫画、小説の発表用のブログです(時間がないときや事情によってはアイデア、プロットレベルのものを提示するのみ、になってしまうかもしれません)。
その他総合的なプロフィールはhttp://www.geocities.jp/tobofu/
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