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「渦流の国の少女・ヒトノカタチ編」 インターバル(3)

会心の出来だ、と味見をしながら料理をしていると、元素子は頭の中でずっと引っかかっていた嫌なことも忘れて、気分が良くなり、悦に入っていた。

だから、知らぬ間にスカラにつまみ食いをされたことにも気づかず、また気づいても、スカラに反発しなかった。

作業中のスカラに握り飯を差し入れしたりもした。

食の快楽を初めて知ったかのようなスカラの表情と、珍しく素直に出てしまったらしい、
「旨いじゃねえか。やるな」という言葉に、元素子の方も素直に嬉しくなった。
他人に感謝されることに慣れてなかった元素子にとって、そのスカラの反応は大きかった。

スカラに上手く乗せられた、という思いもあったのだが、家事全般を任されて、ただ無心に体を動かすことは、
じっと陰々滅々としてるよりはスッキリしたから、気持ちが良かった。

そんな元素子の変化にスカラも調子を狂わされたのか、スカラはある時、しばらく二人が話題にしてこなかったうづるの話を持ち出してきた。



元素子がスカラに保護されてから約二ヶ月が経っていた。

元素子が一時的にスカラの工房から家出をしてからも、一ヶ月は経っていた。


「お前をうづるを釣るための餌にしようとしていたのは確かだ。だから今までここにおいてやっていた…だがな」

スカラは言いにくそうだった。

「うづるさん、一向に来ないですよね。あたしの役目は終わりですか?」

元素子はちょっときつい言い方になってしまったと思った。


「うづるが来る気配は感じられないか?」

「そこまでの能力は、ないですよ。だいたい、スカラさんと同じ星の、頭のいい人たちにも、うづるさんの行動ははっきりとはわからないんですよね」

「…そうだな。ああ、そうだ。お前はどうなんだ。どうしたい」

それは元素子自身ずっと頭に引っかかっていたことだった。
簡単に答えが出せなかったから、曖昧にしてきたことだった。

「うづるさんのことは、分からないんです。もう一回会えたのならはっきりしたのかもしれないけど。うづるさんに付いていくのかどうなのかっていう…」

「そりゃ無理だ。お前の渦流魂と格が違いすぎる。そこははっきりしてる」

「分かってます。それに家出したときにあったこと、話しましたよね。あの事で考えが変わったこともあって」

「俺が言うのもなんだが、お前はここでずっと家事仕事を続けるようなタイプでもないよな」

「…そう、ですよね。そうなんですけど」



「お前が良ければ、ずっとここにいてもいいんだぜ…」

「えっ? らしくないですよ。どうしたんですか」

「それはお前も同じだろう…その、だな、情が移ってしまってな…」

「はい? なんて言いました?」

「いや、聞こえなかったのなら、別にいい。二度と言わん」

「何なんですか」

「どうしたいのか自分で決めろ。どういう答えでも俺は反対せん」



いままで曖昧にしてきたことを改めて突きつけられて元素子は返って困ってしまったが、
そろそろ答えを出す時期だとは思った。


スカラとの会話のあと、元素子は工房の外、玄関前の階段に座った。

ログハウスのような風貌をもつスカラ・テングのフィギュア工房は、周りの廃ビル群の中で明らかに浮いていた。
さらに屋根には用途不明の大きなパラボラアンテナも設置されていたから、目立ちすぎた。

目立ったが、スカラは地球生まれであるものの、異星人の末裔であり、渦流魂のヒトでもないから「端末」に襲われることはなかった。

むしろ、新しいフィギュアを狙ってヒトに襲われることの方が多かった。
だが、工房にヒトが近づけば、その渦流魂の気配を探知して「端末」がやってきたから、スカラにとって、「端末」は間接的に番犬代わりにもなった。

工房の周りには、かつては川か水路だったかもしれなかったものが今では塹壕のように改装されて幾つも走っていた。それは、スカラが工房を建てる前からそうだったらしい。ヒトが「端末」から隠れる目的で作ったものかもしれない。

その塹壕を見ていると、元素子は自分の故郷の地下塹壕を思い出した。
無数に張り巡らされた地下塹壕は他の複数のコミュとも繋がって連絡通路となっていた。

陽子の渦流魂を取り込んだことで、「端末」に狙われても、たいてい追い返すことが出来たから、以前ほど危険な状況にも遭遇しなくなっていた。

もしかしたらもう壊滅しているのかもしれないし、再建しているかもしれない自分の故郷のコミュに、一度戻ってみてもいいかな、とも元素子はふと思った。


しかし、元素子の渦流魂の気性はそうはさせなかった。

「事」は忘れた頃に、意識しないようになってから、向こうからやってきた。
逆にそれは、無意識の度合いが強ければ強いほど呼ぶのかもしれなかった。

元素子ははっきりとした答えが見つからないまま仕方なく工房の中に戻り、夕食の準備をし、スカラと一緒に食べ、早めに就寝した。


そして翌日早朝、ヒトの悲鳴のような音をたてて工房の周りを低空で走る無数の渦流弾の流れに二人は叩き起こされることとなった。



「渦流の国の少女・ヒトノカタチ編」 インターバル終わり。
「渦流の国の少女・ヒトノカタチ編」 第二部「うづる帰還」につづく。
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ジャンル : アニメ・コミック

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その他総合的なプロフィールはhttp://www.geocities.jp/tobofu/
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