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「渦流の国の少女・ヒトノカタチ編」 第二部「うづる帰還」(1)

元素子3

まだ日の出には早い夜半、元素子は腹部の違和感に目が覚めた。その違和感は増すと、鈍い痛みを伴ってきた。

そこで元素子ははっきりと目が覚め、体の異常を感じ取った。

体全体が熱を帯びてくると同時に悪寒が何度も走った。
フィギュアは肉体ではないから、フィギュアに合わせてヒトの形を取っている元素子の渦流魂自体がそんな状態だった。

汗の代わりに関節の隙間から渦流の熱が排気された。

吐き気にも襲われたが、吐き出すものなど何もなかった。
吐き出すとすれば、どこかで読んだオカルト本にあったように、エクトプラズムよろしく渦流を口から吐き出すのだろうか。

そう考えながら元素子はこの気持ち悪さをやり過ごそうとしたがついに我慢出来ず、

「ブースト反転…」

ブースターを反転させて体、いや、渦流魂を冷却しようとした。

渦流魂も一つの生き物だから、当然病気にもなる。
風邪に似たような症状になったとき、ブースター反転による冷却は多少気分を楽にしてくれた。

だが、今回ばかりは異常だった。熱がまったく引かない。
ちっとも楽にならない。


身の危険を感じた元素子はフィギュアの外に素の渦流魂、魂の形で飛び出した。

力が入らなかったので、浮いていられず、床を転がった。

元素子のフィギュアから飛び出したのは元素子自身の渦流魂だけだった。
彼女のフィギュアには彼女自身だけでなく、両親と姉、そしてあるコミュで抱え込むことになったある少女の
人工の渦流魂も同居していた。

ただし、元素子以外はみな意識のない、「死んだ」ただのエネルギー体だったので、フィギュアの外には出られない。


素の渦流魂には視覚はないが、元素子は気配で分かった。
元素子が抜けたフィギュア内で、ある渦流魂だけが異常な熱を発していた。
あの少女、陽子の人工の渦流魂だった。

元素子は部屋のソファにうつむくように座っている昔の自分のフィギュアに入ると、ゆらりと立ち上がり、
小型冷蔵庫から500mlのペットボトルを取り出すと、冷えた水を一気に飲み干し、水分で渦流魂を直接冷やした。

そのまま床に座り込み、しばらくして熱が引くのを感じると再び立ち上がり、ベッドの新しい、今まで入っていた自分のフィギュアのところへ向かった。

驚くべき事に、元素子がベッドにたどり着いたそのとき、ベッドの上のフィギュアの目が開き、上体を起こし、窓の外のある方向を見つめた。フィギュアの腹部は眩しい青白い光を放っていた。


瞬間、ヒトの、甲高い金切り声がドップラー効果を伴って、走った。

「うわっ」

そして、続いて、渦流が窓の外を走った。窓ガラスが波打ち、部屋が振動した。

思わず転んでしまった元素子は立ち上がると、ベッドの上のフィギュアは倒れていて、青白い光も消えていた。
試しにそのフィギュアの方に移ると、最初は軽い目眩に襲われたものの、不快感はだいぶ薄れていて、何とか動けそうだった。

掛け布団をはいで、ベッドから降りようとした時、窓の外、先ほどの渦流が来た方向を見て元素子はゾッとした。

「渦流…渦流弾だ」

無数の渦流弾の光がこの工房をめがけて迫っていた。


「スカラさん!」

元素子は起きてるか寝てるかわからないスカラに危険を知らせるために叫んだ。
それだけで気づいてほしいと思った。残念ながら、スカラのもとに行く時間すらなかったからだ。

叫んだ直後、元素子はベッドの下に隠れ、

「ブースト2!シールド!」

直後、先ほどのようなヒトの叫び声が無数に混ざった轟音とともに、猛烈な渦流の流れが来た。

工房全体が揺れた。




渦流の流れは止むことがなかった。
不思議なのは、直撃がまったく来ないことだった。

しばらく様子を見ていた元素子だったが、シールドを解除してベッドの下から出た。

渦流弾が来た方向とは逆の空が白み始めていた。
夜明けが近づいていた。
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その他総合的なプロフィールはhttp://www.geocities.jp/tobofu/
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