スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「ヒタマ(非実在魂)」 第一章「榊ノボルの事情」(その1)

それがある種の「病気」だと気づいたのは高校生になってからだった。

中学生までの僕、榊ノボルは、今思えば、その「病気」と格闘していて、それが「病気」だと認識する余裕がなかった。

「行きすぎた空想癖」という「病気」。

その空想を他人に聞かせて、面白い、と思ってくれる人が多ければ、その「病気」は「才能」と認められるのだろう。

はじまりは幼少時に誰でもやるような「ごっこ遊び」。

小学生に上がるころには普通はそれからたいていゲームなどに行ったりするのだが、僕は「ごっこ遊び」癖がいつまでも抜けなかった。

父親が売れない役者で、比較的家にいる時間が多く、僕の「ごっこ遊び」につき合ってくれたのだが、流石に学校ではそんな友達はいなかった。

空想癖があるといっても、それほど内向的といえなかった僕は、あるとき学校でクラスの衆人環視の中、一人芝居的な「ごっこ遊び」を堂々とやって、周りから「痛い子」のレッテルを貼られてしまうこととなった。

それでもそのことで大恥をかいたと意識せず平然としていたのが僕の「病気」たるゆえんなのだが、さすがに学校に親が呼び出されるような事態になれば、どうやらおおっぴらにやってはいけない行為だというくらいの自覚は持つようになった。

親も親でのんきすぎで、父親はこいつは役者の才能があるぞ、さすが俺の息子だな、とはやし立て、母親には思ったことを文章か、絵にしてみたら?と言われたくらいだった。

唯一常識人だったのは中学生の姉の美緒で、同じ親から生まれたとは思えないほど、中学生とは思えないほどの現実主義者ぶりを発揮し、自分の親と僕を叱った。

姉のおかげで、学校の成績も人並みになり、僕がいじめにあったと聞けば、いじめた人間の家まで押し掛けるという、それはそれで少々極端な行動に出た。

そんなわけで、成長するにつれて、どうやら「社会」との折り合いをつけなければならないらしい、と最低限の常識的な振る舞いをようやく覚えたのは、中学生になってからだった。


つまり、最低限空気が読める人間になれた。

それこれも本当に姉のおかげで、頭が上がらないのだが、ふと振り返ってみると、姉とそんなに仲が良かったとも言えなかった。

幼少時、父とごっこ遊びに興じている時にも、最初は姉も参加するのだが、すぐに飽きてしまい、端から不可思議なものを見るような目で僕と父とのやりとりをじっと眺めている姿をよく思い出す。

もともと、僕が鈍感だったからかもしれない。

他人の気持ちがよく理解できない僕だったから、姉が僕のことを、幼少時からどう思っていたのか全く分からなかった。


姉は僕のことが嫌いだったのか、そうでもなかったのか。
どうしてそこまで僕の世話を焼いてくれるのか。


姉のおかげで、人並みの頭になった僕は、中学から高校に上がる頃、ようやく、自分の抱えていた、行きすぎた「空想癖」を文章で表現することを始めた。


絵は駄目だった。描いてはみたものの、同じクラスメートは自分が話しかけるとたいてい嫌がるので、美術部の類の人間に見せても、一応見てはくれたのだが、「抽象画?どういう意味?」と誰に聞いても同じ答えが帰ってきた。説明を求められても言葉に出来なかったのだから、自分の方にも未熟さがあったのだろうと感じてすぐに引き下がった。

そして次はとりあえず文章にしたものを、文芸部に見せに行ったが、答えは同じく「よくわかんない」と、突っ返された。

「ごっこ遊び」の原点に戻ろうと思いつき、こんどは演劇部に行ってみたが、「不思議な踊りですね」「パントマイムですか?」と実に微妙な空気を作ってしまい、またもやすぐに退散した。


教師に見せてもほぼ同じ反応だったのだが、ただ一人、高校一年の一学期のみ、国語教科を担当していた若い女性教師にある文章を見せたとき、

「うん、何かを表現したい気持ちは伝わってくるわ。でもね、このままでは他人には伝わらない。他人に伝えるには『型』というものが必要なの。『型』って分かる? つまり『物語』ってこと」

それからその人はいろいろアドバイスしてくれた。
もうすぐ夏休みだったので、僕は夏休み中にその女性教師の指摘を参考に一つの「物語」を書いて、夏休み明けに見てもらおうと思った。


しかし、その女性教師は一学期が終わってすぐ、出産のために学校を辞めてしまった。
スポンサーサイト

テーマ : 創作・オリジナル
ジャンル : アニメ・コミック

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

tobofu

Author:tobofu
http://d.hatena.ne.jp/tobofu/
でアニメ感想系まがいのことをやっていますが、こちらはオリジナル創作漫画、小説の発表用のブログです(時間がないときや事情によってはアイデア、プロットレベルのものを提示するのみ、になってしまうかもしれません)。
その他総合的なプロフィールはhttp://www.geocities.jp/tobofu/
参照。

最新記事
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
Twitter(創作用)
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。