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「ヒタマ」 第一章「榊ノボルの事情」(その2)

表面的には明るく振る舞っていた。
だけど頭の中でのくすぶりはしだいに大きくなっていった。

ある意味、社会適応のために人並みの頭になったことで、幼少時はあれだけクリアだったイメージはどんどん漠然としたものになっていった。

それに物語としての形を与えること、具体化することが難しくなっていった。

いろんなものを読み、見たり、聞いたりした。知識として吸収した。それらはそれなりに参考にはなったが、返って、元から頭の中にあったと自分では感じているイメージを、劣化させるだけのような気がした。


それが「子供」から「大人」になることなのだろう、と理解はした。けれど、頭の中に幼少時からある、イメージは、劣化しつつも「大人」になる課程で消えてはくれなかった。消えてくれさえすれば、どんなに楽だったろう。

そのイメージを生かしたければ、それを他人に伝えるための、もう一つの「社会適応」、技術が必要であり、僕はその技術を手に入れることがとうとう出来なかった。

だから、それは「才能」ではなく「病気」になった。

人並みにはしてくれたが、「才能」を生かす技術を教えてくれなかった姉を恨んではいない。たぶん、姉はそういう道からもっとも遠い人だったのかもしれないから。

だからこそ、僕は自分の描いた絵や文章を家族には見せなかった。両親はただベタ誉めするだろうし、姉はどういう反応をするのか、見るのが怖かったからだ。見せることで姉を傷つけるような気がしたからだ。


そんな僕に、最大最悪、見方を変えれば、救いとなるべき出来事が、悠長とさせる間もなく、やってきた。もし神様がいるのだとしたら、憎むよりも感謝すべきなのだろう。

僕は自分の中に「神様」に近い存在を持っていたのだが、その出来事はいわば「外側の神様」にしか出来ないと思えることだったからだ。


高校一年の後半、夏休み明け。決定的出来事の半年前、僕は、「病気」から逃れるべく、夏休みの間に「キャラ」を変えて、クラスのいわゆるオタクと言われる人間と関わろうとした。

それなりにアニメやマンガなど、普通の人間よりは読んではいたから、表面的には話が通じるだろうと思った。

彼らも「変わり者」のレッテルを貼られていたが、僕とは種類の違うあり方らしく、おまけに僕の数々の奇行を知っていたから、最初は警戒していたが、僕の、オリジナルな個性がありすぎる一方で、人間関係の参照すべきテンプレ的なモデルさえあれば、幼少のころからの「ごっこ遊び」の「才能」は素晴らしく発揮されて、彼らの集団にとけ込むことは容易だった。


そうやって「日常」を作り上げることで、僕は、僕の中にすくむ「病気」をガードしようとした。

たまに「病気」のせいで、意識が「あっち」に飛ばされてしまうことはあったが、気づかれずにすんだ。


オタク趣味と言われるものは、正直、高校生で、たとえバイトをしていても、金銭的にハードルの高いものであったが、そこは仲間同士の貸し借りでなんとかなった。その強い同族意識の連携行動には尊敬すらした。

やがて、アニメやマンガ、ゲーム等の話を仲間としていても、実は自分は本気で好きではなく、ただ「初心者」です、という態度をとりつつ、話を合わせていたことに申し訳ない気持ちにもなった。

そんな自分の相手をしてくれた彼らも、話を合わせていくうちに、作品への愛情よりも、作品を通じて「仲間」が欲しいのではないか、と思える瞬間があったのだけど、本当のところは分からない。何せ、自分の方、僕の正体の方が異常すぎるのだ。


いろいろ思うところはあったが、僕にとっては深く考えてしまうと「病気」が表に出てしまうこともあって、なるべく彼らに合わせ、物事を深く考えないように日々努めた。


短かったが、穏やかな日々が過ごせた。


そして。
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その他総合的なプロフィールはhttp://www.geocities.jp/tobofu/
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