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「ヒタマ」 第一章「榊ノボルの事情」(その3)

高校も二年生になろうという時期、春先に、父が莫大な借金を抱えていることが発覚した。

これで母親の方がしっかりしていればまだマシだったのだが、母親も母親で経済観念に欠ける人間で、人はいいのだが、おめでたい人間だった。


そもそも、家庭の経済を支えていたのは母方の祖父の遺産だった。

母親はパート仕事はしていたものの、父は当然ろくに働かないので、祖父の遺産がなければ、おそろしく貧乏な生活状態になってもおかしくなかった。

母の両親は母と父との結婚に反対だった。それでも母は駄目な父に入れ込み、その後祖父がすぐに亡くなると、祖母は祖父の遺産相続金を手切れ金として母にぶちまけるように渡し、二度と、実家の敷居をまたがせなかった。

いままでやってこれたのは、その祖父の遺産がかなりの額のものだったからだ。

そして、これまでの生活でだんだん減っていったところに父の借金である。

父は勝手に母の祖父の遺産で借金の半分を返したものの、後の半分はなんとか頼むと書き置きして、失踪した。


残された母と僕と姉は、唖然とする間もなく、母はパートの仕事を増やしたものの、これまでまともに働いたことがなかったがゆえに心労で倒れ、姉は予定していた大学進学を諦め、僕は高校を中退した。

姉はこれまでになく激しくキレた。
もしその場に父がいたなら、刺し殺してしまうのではないかと思うほどだった。

僕はただ立ち尽くすだけだった。
母は布団のなかで伏せっていた。

姉は激しく憤りながらも残された理性をかき集めるようにして怒りを押さえた。

僕はかたっぱしから複数のバイトを始めたが、精神が不安定になっていたせいで例の「病気」が表に出やすくなり、すぐにクビになった。

姉は優秀であったにも関わらず、さらに酷く、職がほとんど見つからなかった。

世間では就職氷河期と言われていた(1993年頃)。

貧乏でも生活を維持するだけならまだしも、借金がのしかかっている。どんづまりだった。



いくつかの面接を終えての帰り、家路へと向かう土手の上。絶望的な気持ちとは逆に、これ以上ないほど美しい夕焼けにあたりがオレンジ色に染まっている中、着古したコートのポケットの中でモゾモゾと動くものがあった。取り出してみると一体の関節稼働式の手のひらに収まるくらいの人形が出てきた。

アニメ風の、制服姿の短髪の少女の人形だった。

その人形は僕の手からひょいっと降りると、距離をとって僕に向き直った。

そんな人形をコートのポケットに入れた記憶はなかったのだが、


「あなたの力を貸してほしい、榊ノボル君」

その人形、「元素子(もとこ)」という名の人形が言った。

僕は「その娘」のことをよく知っていた。
何故なら、僕が付けた名前だったからだ。


その瞬間、頭上を定規で正確に計ったような巨大な光の帯が走ったかと思うと、世界が反転するような感覚に襲われ、

そのまま、僕は気を失った。




第一章「榊ノボルの事情」終わり。

第二章「榊美緒の事情」へつづく。
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