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「ヒタマ」 第三章「ヒタマの事情」(その4)

話はまだ続くらしいのだが、さすがに美緒はいったん小休止したくなった。

実は元素子の説明はもっとつたなく、混乱していた。
それでも美緒が上記のように理解できたのは、ノボルの文章を何度も読み返していたからだった。

元素子の説明の一部から初めてノボルの文章の意味がおぼろげに判明しつつあるが、この理解も一つの解釈でしかないと感じつつ、しかし、なるほど、より正確に描写しようとすれば意味不明な文章になるわけだ、とため息をついた。

「事は切羽詰まってるのかもしれないけれど、小休止しましょう」

美緒は肩のコリをほぐすため、背伸びしながら元素子に言った。

元素子は話の途中からデスクの上に座っていた。さすがにこの星、地球Cの玩具でしかないフィギュアでは立っているのが苦しいのか最初は我慢して足をふるわせながら立っていたのだが、美緒が見かねて座らせたのだ。

後ろを見れば、別のイスに座ったままのかな恵が頭をコクコク揺らし舟をこいでいた。
美緒はかな恵をそのままにしてキッチンへ向かった。

窓の外が明るくなっていることから、朝になったのを知った美緒は先に洗面所に向かって顔を洗った。

そしてキッチンに戻り、お湯を沸かした。
自分用のコップにインスタントコーヒーの粉と砂糖を入れ、お湯を注いだ。
かな恵の分のコーヒーも用意した。

渦流魂である元素子は飲食をするのか、するとしてもあのフィギュアの状態でそれが出来るのか、そういえば聞き忘れたな、と思ったが、とりあえず飲み薬用の、まだ新品のままの小さなカップにぬるめのお茶を入れる。最後にクッキーをいくつか皿に開け、全部を盆にのせて仕事場の部屋に戻った。

盆をいったん小型テーブルに載せると、

「う、ううん…」

かな恵が目を覚ました。

「…あ、あたし、寝ちゃってた…。先生」

かな恵が謝ろうとする前に、

「いいのよ、顔でも洗って来なさい。ここにコーヒーと菓子おいとくから」

美緒はそう言い、かな恵が席を外すと、自分のコップと元素子用のカップをデスクに置き、皿からクッキー二枚とり一枚は自分の口に入れ、デスクにティッシュ二枚ほど重ねて広げ、その上にもう一枚のクッキーを細かく分けて元素子が取りやすいようにしてやった。

それを見ていた元素子は腹部に手をやり、つばを飲み込むような仕草をした。
食欲を刺激された分かりやすい仕草だった。

その仕草だけで、美緒は飲み物と食べ物を持ってきて正解だったな、と思ったが、一応聞いてみた。

「ごめん、先に聞いとくべきだったんだけど、食事はするのかしら」

元素子は顔を上げて、精一杯笑顔を作ろうとしたが、フィギュアの限界なのか、美緒にはあまり表情が変わったようには見えない。しかし、

「ありがとうございます。わたしたちでも食事するんです。たぶん出来ると思うんだけど」

表情は変えられないようだから、言葉と仕草で意志を伝えるしかない。

元素子は、フィギュアのサイズから言えば、バケツのような大きさになるカップを抱え、お茶を飲んでみた。しばらく様子をみて、飲めるようだと分かると、今度は美緒が細かくしたクッキーに手を伸ばし、口に運んで、なんとかゆっくり少しずつならかみ砕けるようだと分かった。

「どう? お口に合うかしら」

「ええ、知ってる味です。助かります」

「そう、それは良かった。やっぱり文化が近いのね」

美緒にはぎこちなく食事する元素子がよりいっそう可愛く見えた。
警戒心は残さなければ、と注意していたものの、どうも情が移ってしまったようだ。

渦流魂という存在は、食物をどう消化するのだろう、と素朴な疑問がわいたが、無粋な気がして口には出さなかった。

「もう、二人でなに楽しそうに話してるんですか」

いつのまにか部屋に戻っていたかな恵が自分のために用意されたコーヒーのコップを手に取りながら、嫉妬して言った。かな恵も疲れと空腹から、だいぶ警戒心がゆるんでいるようだった。

しばらく、三人の間に穏やかな空気が流れ、ささやかな朝食の時間を過ごした。


小休止も終わり、第二ラウンドが始まる。
かな恵は率先してコップ類を片付け、

「いったん、外に出ます。コンビニでなんか買ってきますよ。それに編集部にも連絡入れないと」

「そう」

「編集長も心配してるでしょうし」

「あ、連絡入れるんだったら…」

「大丈夫ですよ。適当に言い繕っておきます。事はまだ途中みたいだし、わたしの頭では理解出来ません(笑)。全部終わったら先生から分かりやすく説明してもらいます」

「助かるわ。お願いね」

かな恵はケータイのメール着信の有無を確認しながら、部屋を出て行った。
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その他総合的なプロフィールはhttp://www.geocities.jp/tobofu/
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