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「ヒタマ」 第三章「ヒタマの事情」(その6)

「地球Aとあたしたちの地球Bは渦流ネットワークは繋がりやすかったらしいんです。でも美緒さんの地球Cにはなかなか接触が難しかった」

「でしょうね。たぶんそれはこの地球の人間が、まだ肉体を持っていたから。魂と言われるものと肉体、身体が不可分だったから」

美緒は元素子の事情説明を、美緒なりの物語解釈でパズルのピースをはめるように断定していった。

「そして運良く繋がったのが、榊ノボルさんだったんです」

「宿命的という言葉を使いたくはないけれど、縁の力で渦流ネットワークに繋がりやすかったのね、ノボルは」

「ノボルさんの考えてることは不思議にあたしたちの抱えてる状況にそっくりだったそうです。だから、ノボルさんに頼るしかなかった」

「ノボルはこの地球では異質だったからね。ノボルだけじゃない、私以外の家族は異質だったのよ。でもそっちの地球では異質ではなかった」

「ノボルさんの考えてることの中にあたしの名前があった。だからあたしがノボルさんに会いにいくことになりました。ノボルさんの力もあったのかもしれない、そしてあたしの渦流魂もあたしの地球では特殊なものだったから、その二つの要素が上手くマッチして、あたしは渦流魂のままネットワークを使って行ったんですけど、ノボルさんにはフィギュアの姿であたしが見えてた」

「それはあなたのキャライメージが予めノボルの中にあったから。たぶんノボルはノボルでたんに自分で考えたお話だと思ってた。あなたたちの地球の事情を」

「ええ、ええ、そうです。そう言ってました。そしてすぐにあたしたちに協力してくれた」

「で、あなたはノボルの魂を連れ去った」


美緒がそう言ったとき、美緒と元素子の間でしばらく沈黙が訪れた。

元素子はまた俯いて言葉が継げなかった。

「私はあなたたちを許してはない。けれど、仕方がない。ノボルはそのままでは生きづらかっただろうし。私の憎しみは、あくまで私の物語の問題だから。でも。今更、という気もするの。時間というのは不思議なもので、時間が経つにつれ、憎しみは消えることはないが、だんだん薄まっていく。そして何よりノボルの残したもののおかげで今の私がある」

元素子は顔を上げることしかできない。わずかに、泣きそうな表情になっている。


美緒は他人事のように自分の物語を言葉にしてみることで、じゃべりながら、そうか、そういうことだったんだ、と不思議に長い間抱えていたわだかまりが溶けていくような感覚を感じていた。

「ノボルが呼んだ渦流ネットワークが縁の力を増幅させて私にも影響したのかもしれない。ずいぶん遠回りだったけれどね、ノボルのことをずっと理解したいと思っているうちに、結果的に物語作家としての経験値をだいぶ積ませてもらった。見返りは十分に受けていたのよ、間接的に、あなたたちから。これは事実かどうか分からないわ。あくまで物語的な解釈よ。でもそれで気持ちが収まるのなら、物語は現実に影響を与えることが出来る」

元素子はぽろぽろ涙を流した。

美緒は渦流魂でも泣くんだな、と冷静だった。

「でもノボルさんに協力してもらっても、事態は変わらなかったんです。ごめんなさい、本当にごめんなさい」

元素子は泣きじゃくっていた。

「それでもまだ、美緒さんに頼るなんて、なんて身勝手な」

「見返りは十分に受けたって言ったでしょう。その分は私が返さなきゃ。今度は」


「ど、どうしたんですか、いったい」

いつのまにか、かな恵がコンビニの袋を持って帰ってきていて、泣きじゃくる元素子を呆然と見ていた。


ノボルが失敗した理由を美緒は想像した。

ノボルが残した文章、そして元素子が説明した内容から事情はかなり見通しがよくなっていた。ノボルの文章を見ても分かるが、ノボルはあらゆることを正確に描写しようとしてかえって複雑で他人から見て意味不明なものになっていた。

はっきり言えば、「物語」としては不合格だ。

そして、ノボルの意志、あるいは意識か、そのようなものを地球Bの渦源流が受け付けなかったということは、ノボルのくみ上げた「物語」が不完全で通じなかったということだろう。

ノボルは意識の上では事実を正確に捉えていたのかもしれないが、それを物語化する力、才能はなかった。


「ふふ…」

「先生、なに笑ってんですか、気味悪いですよ」

わたしだって好きで小説家になったわけじゃないのにね。
なんという巡り合わせ。

美緒はイスから立ち上がると仕事用のノートPCをデスクの上に載せ、電源を入れた。

「元素子、大丈夫、今度は上手くいく」

「え…」

まだ泣き止まない元素子は、すぐ横でノートPCのキーを叩き始めた美緒を不思議そうに見た。


渦源流といっても、所詮は人の集まりだ。

だったら。
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