スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「ヒタマ」 第三章「ヒタマの事情」(その7)

美緒はPCのモニターから目を離さずに元素子に聞く。

「そういえば、大事なこと聞いてなかったわ。元素子、タイムリミットはいつまで?」

「へ…」

気持ちが落ち着いていない元素子は何を聞かれたのか一瞬分からなかった。

「しっかりしなさい。子供の使いじゃないんだから。代理といっても私にとってあなたは依頼主同然なんだから」

「は、はい。美緒さんに接触するのに時間がかかりましたから、あまり時間がないはずです。渦源流がまだ小康状態を保っていればまだ多少は余裕が」

美緒は元素子の言いかけの言葉を切った。

「はっきりした今の状態を知りたいわね。連絡は出来ないの? 出来たら確認して」

「そうか、ええと」

事情を当然知らないかな恵はのんきにコンビニで買ったおにぎりを勝手に食べ始めて、美緒のPCのモニターをのぞき込む。

「何を書いてるんですか?」

「何っていつもの仕事よ。ただし、依頼元は元素子だけど」

どんどん流れていくワープロソフトの文章を見ながら、

「小説…もしかして新作ですか!?」

かな恵は目を輝かせた。

「あとで個人的に読ませてあげるから、ほら、元素子を手助けしてやって」

元素子は立ち上がろうとするが、足に上手く力が入らず、バランスがとれないようだった。

「あの窓まで連れて行ってもらえますか」

元素子は美緒のデスク左後ろの出窓の方に顔を向けて、かな恵に言った。

「え、あ、うん。わかった」

かな恵は食べかけのおにぎりを全部口に頬張ると、元素子のフィギュアの足を両手で支えて出窓まで持って行き、張り出し部分に立たせてやる。足は支えたままだ。

「窓、あけてくれますか」

「了解、方角はこっちでいいの?」

「渦流ネットがこの地球全体を覆ってるはずですから、どこでも大丈夫なはずです」

元素子はかな恵があけた窓の外に顔を出し、空を見渡す。

「あれだ、ネットの接点」

といわれても、かな恵には何も見えない。

その方向に元素子は右手をあげて、それほど自由には動かないフィギュアの手の指で空にサインのようなものを書く。

するとすぐさま元素子が見つめる先に強い光の瞬きが、ある一定のパターンで点滅した。明らかに何らかの信号のようだった。

その光はかな恵にも見えた。

元素子は信号の意味をすぐ理解して、美緒の方を振り返って言った。

「まだ渦源流に変化はないそうです。でも、暴走を始めたら、どうなるかわかりません。あらゆる渦流ネットワークを伝わって、影響が広範囲に及ぶ可能性があります。あたしの地球だけでなく、この地球にも。渦流ネット回線の速度は速いですから、事が起きれば、ネットを切断するの、間に合わないかもしれない」

「わかった。要するに出来るだけ早く上げろってことね。それともう一つ質問」

「なんですか?」

「まさかとは思うけど、ノボルの時みたいに、わたしの魂がつれてかれるってことはないわよね。それは勘弁してほしいんだけど」

「それはやろうとしても出来ません。接触するのにさえ苦労したんですから」

「じゃあ、今書いてるのどうやってあなたに渡せばいいのかしら。どういう媒体でってこと。ネット回線経由で? それとも物理メディア? USBメモリとかカードとか。まさか紙媒体?」

元素子には美緒の質問のうち、分からない単語があったが、

「この地球のネットワーク、インターネットって言うんですか? まだ不安定すぎて渦流ネットには接続できないんです。無理にやれば、インターネット全体が破壊されます」

「それは困る」

「だから、この地球の技術は使いません。あたしが直接読ませてもらって渦流魂に記憶させます」

「あなた自身が記録メディアになるのね」

「でも、ひとつ、問題が」

「なに」

「このフィギュア、思ったよりエネルギー食うらしいんです。動かすのにかなり体力がいる。ブースターもないし。だから、美緒さんの文章を記憶させてもらっても、それを長時間保持できないかもしれない」

「バッテリーの消費量が激しいってことか」
かな恵がたとえて言ってみた。

「渦流ネットワークに接続すれば問題ないんですけど、接続出来るとしてもあと一回くらいかもです。何度もやるとこの地球の気象を狂わせてしまう」

「そうだよね、一回接続するだけであんなに天気大荒れになるんだから」
かな恵は昨晩のことを思い出した。


「もう、そういうことは早く言いなさいよ! まったく!」

「ごめんなさい!」

美緒のキーボードを叩く音がいっそう大きくなった。
スポンサーサイト

テーマ : 創作・オリジナル
ジャンル : アニメ・コミック

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

tobofu

Author:tobofu
http://d.hatena.ne.jp/tobofu/
でアニメ感想系まがいのことをやっていますが、こちらはオリジナル創作漫画、小説の発表用のブログです(時間がないときや事情によってはアイデア、プロットレベルのものを提示するのみ、になってしまうかもしれません)。
その他総合的なプロフィールはhttp://www.geocities.jp/tobofu/
参照。

最新記事
カレンダー
04 | 2017/05 | 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
Twitter(創作用)
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。